住宅宿泊事業法(民泊新法)とは

住宅宿泊事業法(民法新法)とは?

既存住宅を活用した民泊ビジネスが世界中で急速に増加し、この日本においても2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を控えて、多くの外国人が観光で訪れるようになりましたが、反面、宿泊施設の不足により、この民泊ビジネスが急速に拡大していることが背景としてあげられます。
ただし、この急速に増加する「民泊」について、安全面・衛生面の確保に課題があり、騒音やゴミ出しなどによる近隣トラブルが社会問題となり、さらに民泊を無許可で運営する例も多く見られました。

そこで、外国人をはじめとした観光客の増大や宿泊ニーズの多様化に対応するため、「民泊」の適正な運営を確保しつつ、国民生活の安定向上や国民経済の発展に寄与するためにこの「住宅宿泊事業法」が平成29年6月に成立しました。

旅館業法との違いは?
旅館業法は主に公衆衛生に焦点を当てていますが、住宅宿泊事業法(民泊新法)は、観光客の来訪や滞在促進、そして国民生活の安定と国民経済の発展に寄与することを目的としています。
また、旅館業法は許可制であるのに対し、住宅宿泊事業法は届出や登録となっているところも大きな違いです。

旅館業法(簡易宿所) 住宅宿泊事業法
営業日数の制限 なし 年間180日以内
申告方法 許可 届出 or 登録
近隣トラブル防止措置 なし 苦情対応
ゲストへの説明義務
「標識」掲示義務
宿泊者名簿 氏名、住所、職業、旅券番号等 氏名、住所、職業、旅券番号等
衛生管理 換気、採光、照明、防湿、清掃等 定期的な清掃等

 

各業者の種類と役割
①「住宅宿泊事業者」・・・住宅宿泊事業法第3条第1項の届出をして、住宅宿泊事業を営む者【民泊ホスト】
②「住宅宿泊管理業者」・・・住宅宿泊事業法第22条第1項の登録を受けて、住宅宿泊管理業を営む者【民泊運営代行会社】
③「住宅宿泊仲介業者」・・・住宅宿泊事業法第46条第1項の登録を受けて、住宅宿泊仲介業を営む者【Airbnbなどの民泊仲介サイト】

住宅宿泊事業法全体の枠組

住宅宿泊事業者に係る制度の創設

1.住宅宿泊事業を行なおうとする者は、都道府県知事等への届出が必要
年間提供日数の上限は180日とし、地域の実情を反映する仕組みの創設
(条例により実施(日数制限等)の制限があります)

2.家主居住型の場合は、住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置を義務付け
(衛星確保措置、宿泊者に対する騒音防止のための説明、近隣からの苦情への対応、宿泊者名簿の作成・備付け、標識の掲示等があります)

3.家主不在型の場合は、住宅宿泊事業者に対し、上記措置(標識の掲示は除く)を住宅宿泊事業者に委託することを義務付け

4.都道府県知事等は、住宅宿泊事業者に係る監督を実施

住宅宿泊事業とは

旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事案であって、人を宿泊させる日数が1年間で180日を超えないものをいいます。
住宅宿泊事業を実施することができる「住宅」は、台所、浴室、便所、洗面設備が備えられた施設でなければなりません。また、居住要件として、現に人の生活の本拠として使用されていること、入居者の募集が行なわれていること、随時その所有者、賃借人、または転借人の居住の用に供されていることが求められています。

住宅宿泊事業者とは

届出をして住宅宿泊事業を営む者をいいます。

事業を開始するためには

届出をする
住宅宿泊事業を営もうとする者は、都道府県知事等に当該事業を営む旨の届出をする必要があります。また、届出の際、入居者の募集の広告等住宅が居住要件を満たしていることを証明するための書類、住宅の図面等を添付することとしています。

届出の流れ

大まかな届出の流れ

届出前の確認
住宅宿泊事業の届出をしようとする者は、届出の前に下記の事項等について確認をしておく必要があります。
1.届出者が賃借人及び転借人の場合は、賃借人及び転借人が住宅宿泊事業を目的とした賃借物及び転借物の転貸を承諾しているか
2.マンションで住宅宿泊事業を営もうとする場合には、マンション管理規約において住宅宿泊事業が禁止されていないかどうか
(管理組合において禁止されていないかの確認が別途必要です)
3.消防法令適合通知書を入手する

届出の流れ
届出をする場合に届出書に記入が必要な事項として定められている事項は以下のとおりです。

①事前相談 → ②要件の確認と工事 → ③消防検査と適合通知 → ④書類収集 → ⑤書類作成と提出 → ⑥通知書交付 → 営業開始

提出書類
①住宅宿泊事業届出書 第一号様式(第一面)
②住宅宿泊事業届出書 第一号様式(第二面)
③住宅宿泊事業届出書 第一号様式(第三面)
④住宅宿泊事業届出書 第一号様式(第四面)
⑤住宅宿泊事業届出書 第一号様式(第五面)
⑥不動産登記事項証明書
⑦住宅図面
⑧転貸等の承諾書(賃貸物件の場合)
⑨規約の写し(分譲住宅等の場合)
⑩管理組合の確認書(分譲住宅等で規約に民泊の定めがない場合)
⑪法人登記事項証明書(法人のみ)
⑫定款(法人のみ)
⑬登記されていないことの証明書(申請者の分や法人は役員全員分)
⑭身分証明書(申請者の分や法人は役員全員分)
⑮管理受託契約の締結時の書面(住宅宿泊管理業者に委託する場合)
⑯誓約書
⑰入居者の募集が行なわれていることを証する書面等(生活の本拠として使用していることが証明できないとき)

住宅宿泊事業者の業務

住宅宿泊業者は、住宅宿泊事業の適正な遂行のために様々な措置等をとる必要があります。

1.宿泊者の衛生の確保について
(1)居室の床面積は、宿泊者1人当たり3.3㎡以上を確保すること
(2)清掃及び換気を行なうこと

2.宿泊者の安全の確保について
住宅宿泊事業者は、下記の事項について行なう必要があります。
(1)非常用照明器具を設けること
(2)避難経路を表示すること
(3)火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置を講じること

3.外国人観光客である宿泊者の快適性及び利便性の確保について
住宅宿泊事業者は、宿泊者に対し、下記の事項について行なう必要があります。
(1)外国語を用いて、届出住宅の設備の使用方法に関する案内をすること
(2)外国語を用いて、移動のための交通手段に関する情報を提供すること
(3)外国語を用いて、火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内をすること

4.宿泊者名簿について
住宅宿泊事業者は、宿泊者名簿の備付において、下記の事項について行なう必要があります。
(1)本人確認を行なった上で作成すること
(2)作成の日から三年間保存すること
(3)宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日を記載すること
(4)宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号を記載すること

5.周辺地域への悪影響の防止について
住宅宿泊事業者は、宿泊者に対し、下記の事項について書面の備付けその他の適切な方法により下記の事項について説明する必要があります。
(1)騒音の防止のために配慮すべき事項
(2)ごみの処理に関し配慮すべき事項
(3)火災の防止のために配慮すべき事項

6.苦情等への対応について
住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問い合わせについては適切かつ迅速に対応しなければなりません。

7.住宅宿泊管理業者への委託について
住宅宿泊事業者は、以下の場合には、上記1~6の措置を住宅宿泊管理業者に委託しなければなりません。
(1)一の届出住宅の居室の数が5を超える場合
(2)人を宿泊させる間、不在等となる場合(ただし、日常生活を営む上で通常行われる行為に要する時間の範囲内の不在は除く)

8.住宅宿泊仲介業者への委託について
住宅宿泊事業者は、宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、登録を受けた住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託しなければならなりません。

9.標識の掲示について
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、見やすい場所に、表式を掲げなければなりません。

10.都道府県知事への定期報告について
住宅宿泊事業者は、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の15日までに、それぞれの月の前2月の下記の内容について都道府県知事等に報告しなければなりません。
(1)届出住宅に人を宿泊させた日数
(2)宿泊者数
(3)延べ宿泊者数
(4)国籍別の宿泊者数の内訳

都道府県等は、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化を防止するために必要があるときは、合理的に必要と認められる限度において、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、区域を定めて、住宅宿泊事業を実施する期間を制限することができます。
届出住宅が所在する都道府県等で、条例で定めたルールがあるかどうかの確認が必要です。(長野民泊サポートセンターで確認ができます)